Audio Modeling SWAM-Sに属する、Violin,Viola,Cello,Double Bass の入力について記す。
制御可能なパラメータが多いため、変動させるパラメータを厳選する。
設定が及ぼす影響を考え、それらの中で優先度の高さを で示した。
尚、奏法により省けるパラメータも存在する。
を多く付けたパラメータを一定にすると機械らしさが色濃く出るので注意する。
他のパラメータは表現に対する影響度から楽器そのもののデザイン向きだと考える。
労力や負荷の割にあまり恩恵を受けられないと判断したものは後半に記す。
Advanced Parameters Options は常に変動させる必要はない。
マッピングカーブやヒューマナイズなど入力の補助に役立つもので、打ち込む前に設定しておくと制御が楽になる。
タイミングや表現をプロの演奏講座で学んでおくと入力の助けとなる。
以下の動画はとても参考になる。
美しい表現について、様々な奏法について、レガートとビブラートについて。
このパラメータでは弓を引く速さを制御する。
サンプリング音源のように全体の抑揚を制御するものだと捉えると表現の幅が狭まってしまう。
SWAM-Sでは3種の入力法(Bow Gesture)が存在する。
デフォルト設定のBow Gesture: Expressionでも不自由はないが、コントローラや奏法によって適宜変更する。
Bow Gesture: Bowingではグラフの傾きの絶対値がエクスプレッションに影響するようになり、
コントローラを動かす速さが音の大きさ、動かす方向が弓の向きと対応する。
扱いが難しいが、使いこなせれば他のどのモードよりも本物の楽器に近い演奏感が得られる。
弓の返しを容易に入力できるため、トレモロも自在で応用がきく。
詳しくは後述する。(参照: Bow Gesture)
一音中で数値を0にすると画面上で弓を引くのをやめ(弓の速さもGUIに反映されている)、数値を上げると再び弾き始めるのが確認できる。
ポルタート(スラーを切る)の表現にはこの手法を用いる。
0区間が一瞬(ダイナミクスが減衰しきって0になる前)なら弓の向きはそのままだが、間隔が空きすぎると「弾き直し」となり弓の上下が反転する。
Bow Lift: Offに限り、弾き直しの直前にBow Start(Bow Change):Up / Downを指定すれば弓を反転させないようにもできるが、
特別な意図がなければあまり使う機会はない。
値を0にする効果を多用するので、Expr.Rel.Stop 設定はONのままにしている。
OFFにすると値が0になってもダイナミクスが0にならない。
細かく入力しなければならないとはいえ、全ての音に抑揚をつけるとまとまりがなくなってしまう。
大切なことは、弓の返し(スラー、上げ弓、下げ弓)ごとにグラフに一つ山をつくるということ。フレーズを意識して表現すると自然に聴かせられる。
スタッカートなど弓を離す奏法では一音ごとに設定する方がよいが、プラグインの仕様上、
ダイナミクスはノートオフの瞬間から自動的に0への直線を描くので大ざっぱでも気にならない。
短音に特殊な意図がある場合は、きちんと0までグラフを描くことで、
瞬間的に離れる弓や、弦がまとわりつくような微妙なニュアンスを付加できる。
長音では初めから終わりまでが直線的すぎるグラフは好ましくない。
目標値に収束するように反行から始まるダブルカーブを描くと自然な抑揚になる。(逆にすると、前のめり気味なガツガツした演奏を表現できる)
長音が強拍から始まる場合、直前の音の最後に圧力を抑え、ピッチを下げると同時に急なグラフの谷を描くとタメが表現できる。
ソロにおいて、フレーズの最後に生じる強い弓の引き離しを表現するため、
急激な上昇カーブを描いてから0に収束させることがある。
ブレスコントローラを用いて入力する場合、入りは自然になるもののダイナミクスが笛のそれになりやすいので注意する。
弦楽器だということを意識して息を吹き込むか、マッピングを変更することで対応する。
Advanced: Expression Curve(Expr. Pedal Typ) [Lin 0 ~ Exp 1 (初期値Ln 0.4)]
Expressionの反応が直線的か指数的(下に凸)か設定できる。(木管では直線的か対数的)
Exp寄りに設定するとダイナミクスを付加してくれるので、手入力の場合はいくぶん楽になるかもしれない。
外部コントローラを使用する場合は却って邪魔になるときもある。
値が0に近くカーブが直線的だとグラフが正直に反映される。自分に合った感度を探してカスタマイズする。
実際の弦の発音手順に従ってビブラートをかける。
必ず演奏動画でタイミングを確認する。
タイミングや速度、変化量の制御しやすさから、バイトセンサー(ブレスコントローラ)による入力が楽だと思われる。 Vibrato Rateの入力も同時にでき、自然な表現にしやすい。
一音内でのビブラート量グラフを描いてみると、四角形に近くなることが多い。
分かりやすい効果の割に求められる入力精度も高くなく、楽器をイメージさえすれば比較的楽に打ち込めるパラメータである。
不安な場合は、先にも挙げたように動画で学ぶか、GUIに表示される振幅を確認する。
振幅の誤差はあまり気にせずともよいが、ノートオフに向けてのグラフの増減(フェードイン、フェードアウト、オン、オフ)の判断は
その都度決定する。
ビブラートを利かせたい音かどうかを判断し、強弱のメリハリをつける。
ビブラートはピッチの変化によるものなので、Vibrato Depthパラメータを使わず
Pitch Bendだけで波形を描いて表現してもよいが、難度は上がる。
2つを併用することで機械的でないビブラート表現が楽にできる。
短音では、ビブラートを強く設定しても影響が少ないので、あまり意識せずとも構わない。
むしろ微妙なピッチ変化を付加できるとも考えられるが、音程は他のパラメータからも似たような効果を受けるので、
最終的には好みの問題である。
MIDI: 0 ~ 127まで数値入力ができるが、デフォルトではMIDIに対応する上限値は100と設定されている。(MIDI: 127 が Vib Dpt: 100 に対応)
上限値100のままで不自由なく演奏できるので設定変更する必要はないが、コントローラ側の感度を調整し、MIDIマッピングで上限値を127にしてもよい。
その場合、特に低値での繊細なビブラート制御が求められる。
Advanced: Vibrato Fade-In(ms) [100 ~ 1000 (初期値250)]
最小遅延設定が0msではないので、ノートオン以前から値を設定していても大きな影響はないが、
初めと終わりのノンビブラート部分をきちんと表現すると生々しさが増す。
ビブラート周期を制御するパラメータで、Vibrato Depthと組み合わせて設定する。
機械的な周期にならないよう長音では必ず変化させるが、短音では平坦でも気にならない。
目標値に向け、ゆるやかなカーブを組み合わせて描くように収束させるとバラつきを表現できる。
設定するべき周期はビブラート量よりも抑揚や音程に相関があると考えられる。
例外はあるが、アタックやクレッシェンド、その音の終わりで弦から弓を離したり返すなど、
力が入りやすいと思われる箇所では周期が早まる。
弦に弓を乗せたまま緩やかに静かに止める箇所や、跳躍のあるレガートの直前、勢いをつけて周期を早める前では遅くする。
Bow Liftでノートオフ時の設定を併用するとよい結果を生む。
下の画像はLeap Motion(Vibrate Rate に手首のひねりを割り当てたもの)による入力。
グラフはガタガタしているが、一音内での大筋の数値(平均値)が表現に添うカーブを描いている。(Vib Dpt: 0部分では値は影響しない)
適度なヒューマナイズを施すため、綺麗すぎるグラフにはしない。
Advanced: Vibrato Random(Vibrato Rate Ra) [0 ~ 20 (初期値6)]
数値を高くするとビブラート周期がランダムになり、うねるようになるが、コントローラによっては不必要。
セクション化して位相を整える場合に役立つかもしれない。
最重要パラメータのひとつで、音質や奏法との結びつきが強い。
また、目的をもって丁寧に入力する必要があり、適当に入力すると途端に嘘くさくなるため細心の注意を払う。
激しく擦りつける表現やフラウタンド(笛のような音色)までなめらかに設定できるが、
大切なのは、力を抜く瞬間に向けて圧力をかけているのだということ。
いつ強めるかより、いつ弱めるかに重きを置く。
弱めるタイミングによって奏法を柔軟に使い分け、自分だけの表現の幅を広げられる。
入力する前に、力の入りやすさを頭の片隅に置いておく。弓は弓元(手元)が重い。
入力に際し気をつけるポイントは大きく分けて、
始点、終点、ダブルカーブの変曲点2点(開始直後の起伏の有無、終了直前の起伏の有無)の4点。
ほとんどの奏法はこれらの値を補間したグラフで表現でき、圧力とExpressionグラフについて、多くの場合で値の変化方向に相関があると考えられる。
尚、開始直後、終了直前の起伏はBow LiftのON / OFFによって決定する。
ONならばそれらの起伏をなくしグラフを滑らかに繋ぐ。
OFFならば小さな反行を絡めた起伏を描くとアクセントを付けられる。
ちなみに、Expressionのリリースに関して、ペダル(CC64)とキースイッチ(G)の同時指定で表現を切り替えられる。起伏指定の参考にする。
圧力に注意を払うべき奏法について簡単にまとめる。
Sustain | クレッシェンドでない限り、圧力の低下表現を常に心がける。フレーズの繋ぎ目や、弓の返しでは圧をかける直前に反行を挟む。 |
Tenuto | ノート間を短く入力しLegatoにしない。圧力グラフは山をほぼ水平に潰した形でノートの繋ぎ目で瞬間的に低下させる。 |
Slur | ノート同士の繋ぎ目をなくすか、Pedal: ON, Note-off Sust: Holdにし、1つのSlur(弓の返しがあるまで)に対し1つの山を描く。 |
Detache | Pedal: ONで、ノートが重ならないようにすると一音ごとに弓の方向が切り替わる。アタックが際立つようノートそれぞれで圧力低下を入力する。 |
Staccato | ノートを短くするだけだが、こだわる場合は値の始点と終点を決め、発音の瞬間からすぐに圧力を下げる。(グラフは直線的になる) |
Marcato | Staccatoのグラフを少し上に凸にし、台地状に軽くグラフをつぶし、圧力を急激に下げる。その傾きで強さを調節する。 |
Spiccato Sautille | Bow Lift: OFFで、短くStaccatoのグラフを描く。圧力とAccentの値でざらつきの程度を調節する。 |
Ricochet Saltato | Bow Lift: OFFで、ノートのBow Startを揃え、最後だけ向きを反対にする。圧力はなだらかに減少させ、最後だけ強める。 |
Colle | Bow: Lift: ONで、Staccatoのグラフの途中でBow: Lift: OFFに切り替える(弓を跳ねさせる)。音長に圧力低下のタイミングを合わせる。 |
Martele | Bow: Lift: ONで、高ベロシティ、高エクスプレッション、高圧力から始めて急激に下げる。 |
動画で分析すると理解が深まる。
弾く位置の設定について記す。
まず、Bow Pos(Bow Gesture: Expression)では、
弓を駒寄りで弾くSul ponticello(起伏少なくなるが太く鳴らせる)から、指板寄りで弾くSul tast(引掻くような音になりやすいが繊細に鳴らせる)
までなめらかに表現できる。
ただし、指定できる範囲はそう広くない(0.05 ~ 0.15)。打ち込みの労力を考え、奏法指定と同様に扱う。
こだわる場合は、フレーズ(弓の返し)毎に向きを変え、なだらかに山を繋ぐ。
ここで設定した値は、Bow Pressureによって出音への影響度が変わる。
Sul ponticello(0.05)では音の透明度は下がるが、圧力による音の濁りが比較的少なく、安定した出音が期待できる。
Sul tast(0.15)で高圧力による演奏を行うと、長音では音程が安定しなくなる。
高圧力・短音でのアクセントとして用いるか、低圧力・長音での静かで美しい演奏に向く。
デフォルトではBow Position: 0.10だが、そのままで上記のどちらの特徴も半分ずつ併せ持っていて扱いやすい。
中程度の圧力で演奏する場合はBow Posから受ける影響は小さいため、
pp,ffや圧力指定のある奏法、長音を美しく響かせたい場合などに一時的に変更する。
次に、Pizz Pos(Bow Gesture: Pizzicato / Col Legno)では、弦をはじく位置を設定できるが、これも常に変動させる必要はない。
指板寄りの方が若干よく響くかなといった程度で、他のパラメータほど大きな違いはない。
Bow Gesture: Pizzicato, Col Legnoの音色を設定する。
範囲は0.00~1.00で、0.00に近いほど乾いた音色になるが、常に変動させる必要はない。
はじく奏法ではExpressionの影響を受けない代わりにVelocityの強弱で表情をつける。(VibやPitchの影響は受ける)
音質はPizzicato Toneの他、Attack, String Res.(Release Time), 外部EQなどでデザインするとよいと思われる。
設定の有無で質感に驚くほど差が出る重要なパラメータである。
弦を指で押さえる楽器では、一曲を通してピッチを狂いなく完全に安定させることは難しい。(特にハイポジション)
実際の楽器演奏に近付けるため、出音を耳で確認修正しながらリアルタイムで入力し、数値は常に変動させる。(開放弦を除く)
変化量が微細であれば大きな影響はないが、適度なヒューマナイズの役に立つ。
はじめに、音程の設定について記す。
制御方法はいくつか存在するが、ここではDAWのPitch Bendを扱う。
値の変動が弦を押さえる位置に反映され、音色が毎回生成されるので自然になる。
SWAMのMaster Tune Hzでも同じようなことはできるが、範囲が狭く楽器それぞれでアドレスの割り当てが必要なため、
あくまで基準ピッチの設定項目として捉える。
Micro Tuning機能(12音階別でのチューニングON/OFF)は楽器や奏者の癖さえも表現できる。
これらのパラメータについては後述する。(参照: Tuning)
ちなみに、SWAM Violinで演奏可能な音域はC#2以下からG#7以上(ピアノより高音域)である。
通常はG2~F6だが、上記の全てのチューニング変更により音域を拡げられる。
TemperamentやHarmonicsを併用すると15000Hz(A4=440HzとしてA9以上)あたりまで出せるが、出音は不安定である。
音域拡張は用途が幅広く、特殊奏法はもちろん、Double Bassでは超高音域(現実ではほぼ演奏不可能)で二胡のような音色を出せたりと変わったこともできる。(コントローラの基準ピッチを1オクターヴ上にすると演奏しやすい)
Advanced: Max P.B. Rangeでピッチ変動の範囲を一括設定できる。
尚、PB D(Pitch Bend Down)で下限を、U(Pitch Bend UP)で上限を個別に設定できる。(12で1オクターヴに相当)
デフォルトではD: 2.0, U: 2.0に設定されているが、これはこのままで丁度よい数値である。
範囲を広げると、少しコントローラを動かしただけで大きく数値が変動するようになるので制御が難しくなる。
ピッチは揺らすが、下手にならないように注意する。
次に、ピッチを変動させるタイミングについて記す。
フレーズのはじめは高音域でない限り下のピッチから始めることが多い。
出音後、すぐさま本来のピッチへ近付ける。超過を経て安定させる場合もある。
高音域(弦の音程の間隔が狭く指の位置のずれが大きく影響する)や、フレーズの跳躍後ではピッチを超過気味にするとほどよく緊張感が出る。
また、レガート部分では直前に一瞬反行を含めるとタメを表現できる。
細かい跳躍の繰り返しや速い駆け上がりではピッチを不安定にする。
動きのあるフレーズではグラフは複雑で汚くなる。ピッチが整いすぎていると機械的に聴こえる。
静かに美しく響かせたいか、情熱的にダイナミックに聴かせたいかで変化の程度を使い分ける。
アタックのノイズ量を設定するパラメータで、特に短音や強音で真価を発揮する。
Pizzicato, Col Legnoには影響しない。
Velocityはもちろん、Bow PressureやBow Liftとの組み合わせで様々なアクセント表現ができる。
このパラメータはアタックのみに影響するので、ノートの途中で変化させても意味はない。
長音ではレガートでの演奏も多いため、低めの数値にするのがよいと思われる。
第二のベロシティのようなものだと考える。
また、Bow NoiseよりもAccentの方が音色に強く影響を及ぼす。
余裕があれば両方設定するが、常に変動させる手間を考えるとBow Noiseのグラフは省くことが多い。
運指の位置を設定することで質感を揃え、同一弦での滑らかなレガートを可能にする。
ポジションは3種から選択できる。
制御方法はKSとCCの2通りあるが、KSは押した瞬間にしか切り替わらず、反映速度がまばらに感じられる。CCで一括すると繰り返し編集する場合に楽。
音色に影響を与える瞬間にCPU負荷が強くかかるようで、ON / OFFタイプの機能はCCで制御しても心配は要らない。
ポジションを切り替えると同一弦でのレガート可能な範囲がずれる。
上行か下行か、跳躍の幅によっても鳴る弦が変わるため、違いを聴き、GUIで運指を確認する。
開放弦(弦を指で押さえず弾く)は最低音を除いてノンレガートでのみ鳴らすことができる。
その音程は Advanced: Str. Tuning(string0tune)から設定する。
Violinの設定では、デフォルトで最低音はGだがD#~Bに変更可能。(旧版のため下の画像はF~A)
また、弦のチューニングを4th / 5th(隣の太い弦からの音程)で切り替えられ、レガートの他に
ダブルストップ(弦をまたいで同時に和音を鳴らす)で開放弦を指定する場合にも有効。
トリプル/クアドルプルストップの場合は分けて入力する。
開放弦はビブラートがかからない(弦に指が乗っていないためかけられない)ようになっており、Vib Depthの影響を受けずノンビブラートで鳴る。
響きが豊かで目立つため、フレーズの途中や弱音では用いないことが多い。
フレーズの開始終了時に弓が弦に乗っているかどうかを設定する。
元々KSに割り当てられているが、Alt Fingと同様にCCで制御する。
設定による音色の違いは先の動画(参照: Accent)でも扱っているため省略する。
このパラメータは特に奏法指定(参照: Bow Pressure)で必須となる。
注意すべき点は、レガートであればBow Lift: ONが持続しているということ。GUIでも確認可能。
ノートオフの瞬間、Bow Lift: OFFであれば弓を弦から離す時のノイズが付加される。
基本的にはOFFのままで不自由はないが、短音で粒を揃えて速弾きしたり、弓の返しを表現したり、静かに始める・終わらせる場合などにも役立つ。
弓のノイズ量を設定するパラメータである。
掠れたようなノイズを付加でき、音量の小さいFlaut.で特に効果的である。
労力の割に効果が薄いので表現としての優先度は低めだが、音色作りには欠かせない。
静止しているものの動き出しや弓が弦と触れている(押し付けられている)面積が広い箇所、
つまり弾き始め(弓の返し直後)と長音の中間地点で弓のノイズが発生・強まると考えられる。
また、上げ弓と下げ弓による力の入り方の違いを考慮するとより自然なタイミングでノイズを乗せることができる。
セクション化する場合は控え気味に設定すると良い結果を生む。
ここでは共鳴に関わるパラメータをまとめて扱う。
String Res.(Release Time)では弦が共鳴する時間を設定する。
1弦(一番細く軽い弦)から遠ざかるほど、また、ハイポジションであるほど指が弦触れる面積が増えるため時間は短く設定する。
ピチカートの演奏においては速いフレーズでは時間を短くし、ゆったりとしたフレーズでは時間を長くすると効果的である。
OpenStringsでは開放弦が共鳴する程度を設定する。開放弦の音色をどれだけ差別化するかのパラメータだと考えると設定しやすい。
高値では共鳴音が目立つようになり、低値では他の音との差がなくなる。
開放弦の特性を活かす場合は高値にし、フレーズ中に組み込まれていれば低値にすると良いと思われる。
String Res.と違いこちらは常に変動させる必要はない。
アタックに好みのニュアンスを付加するためにはいくつか方法があり、組み合わせることで幅広い音作りが可能となる。
前述のAccentによるアタックノイズの大きさを、Velocityでアタックの強さを設定する。
低Velocity(またはCC)によるポルタメント・レガートもアタック表現の一種だと捉える。
Velocity低域またはPort.Time(Portamento Ctrl)[Velocity / CC (初期値Velocity)]
によってポルタメント時間を設定できるが、変化は直線的である。
タメを表現する場合は段階的にノートを挟んでポルタメントさせるかPitch Bendを併用する。
Advanced: Port/Leg Speed&Thresh(Max Port Time) [1.00 - 3.90 - No Port (初期値2.50)]
ポルタメントに切り替わる閾値を設定する項目である。Gesture Mode: ExpressionではNo Port(ポルタメントしない)設定やExpressionグラフだけでは弓の返し表現が満足にできないため、
CC64かGesture Mode: Bipolar / Bowingを利用する。
Advanced: Portam. Split Ratio(Portamento Spli) [5 ~ 95 (初期値50)]
弦をまたいでポルタメントする場合、それぞれの弦でどれだけポルタメントをするかの割合(%)を設定できる。
5であれば出音後すぐさま隣の弦へ移りポルタメントを開始するが、95なら初めの弦でほとんどポルタメントしきってから隣の弦へ移る。
初期値の50よりも、どちらかに極端に振ってしまった方が人間味があるレガートになると思われる。
Attack Typeによってアタックそのものが変わるわけではなく、下限上限も全て同じであることに注意する。
Vel.SoftとVel.Hardの違いは感度(マッピンググラフ)のみで、低Velocityでのアタックの強さが異なる程度に捉えておく。
Expressionのグラフ傾向からして、Attack Type: Expressionが最も安定したアタックになると考えられるが、音の選択幅は狭まる。
尚、Gesture: Expression以外では、Expression値による出音に対応したアタックの強さになる。
Advanced: Env Attack Speed(Atk Env Speed) [3.5 ~ 10.0 (初期値6.0)]
VelocityやAccentほど頻繁には変更しないが、アタックのニュアンス設定ができる。
弱音かつ鋭い短音表現など低Velocityにおける音の輪郭補正が必要なときに有用である。
Velocityでアタックの強さを選択し、Env Attack Speedでその輪郭を整えるものだと考える。
デフォルトではCC64に割り当てられており、VSTパラメータが存在しない。(Ver.2.0.2)
CC64によるON / OFFの切り替えと、Note-off Sust. Mode(こちらはVSTパラメータ有)による3種のタイプ(Hold, Acc., Fade)指定によってノートオフ後の挙動が決定される。
先の動画(参照: Bow Pressure)ではダイナミクスとそのアクセント表現について記したが、
重要なのはCC64: ONの状態でノートオフまたはExpression: 0を挟むと弓の返しが行われるということである。
グラフが弓の方向と対応していないGesture Mode: Expressionでは必須のパラメータである。
ノートを繋ぐと、高Velocityでも2音目以降はLegato Slurred / CrossString(GUI)となり、
フレーズ内だけでなくフレーズ間までもが一弓で弾いたように滑らかになりすぎ、のっぺりとした印象を与えてしまう。
フレーズを滑らかに繋ぎたいが独立させたい、といった場合に真価を発揮する。
また、弓の返し部分では低Velocityであってもポルタメント挙動が起こらずLegato BowChange(GUI)となる。
スタッカートノートより弱く滑らかなアタックを表現できるのも強みである。
Advanced: Sustain Latch [ON / OFF (初期値OFF)]
ONにするとSustain: ONの信号がON / OFFのスイッチとなる。
現行版ではAdvancedの項目から外されており、VSTパラメータ(sustainLatch)からのみ設定できる。
重音奏法やピチカートで設定が必要となるパラメータである。
リアルタイム演奏で弓弾きをするなどAlt Fingの指定が追いつかない場合はMono SXまたはAutoが適していると考えられる。
ピチカートが主体になる演奏ではMono SXよりMonoの方がレガートの響きが自然になりやすく好ましい。
重音奏法で注意しなければならないのは弦とポジションの選択である。
SWAMの仕様で「最後に鳴らされた位置から最も近い弦とポジションを選択する」ようになっているため、
ノートのタイミングを僅かにずらして弦を選択してから重音を鳴らすようにしたり、
直前のレガートノートを若干早めに切り上げるなど調整が必要となる場合がある。
また、低音域ではノートオンのタイミングが同じである重音が連続して鳴らない不具合もある(Ver.2.0.2)ため、確認は必須である。
Advanced: Dbl / Hold Str. Selection(dblHoldStrSelec) [3-4/2-3/1-2 (初期値3-4)]
Double / Holdでどの隣り合った弦を優先して鳴らすか指定できる。
指定されていない弦は持続音にならない。
Advanced: Auto / Poly Detect. Time(autoDetectionTi) [10 ~ 31 (初期値12)]
レガートと重音を判別する間隔の閾値を決定する。
Autoでは重音はスタッカートノートでのみ検出されるが、認識に若干の遅延があるので注意する。
Advanced: Mono String Crossing(Mono String Cro) [1 sem / 2 sem / Harm / All (初期値2 sem)]
Mono SXにおいて、弦をまたぐレガートで初めの弦の振動を隣の弦のどこで止めるかの設定であり、1半音まで、2半音まで、倍音まで、全て止める、の4つから選択できる。
2つの弦の音が混じり合う程度は Mono > SX 1 sm > SX 2 sm > SX Harmである。SX Allでは弦の音が混じらない。
低速・低Velocityのピチカートレガートで確認しやすい。
弓と弦の摩擦に関わる松脂量を設定するパラメータである。
松脂そのものの量と捉えても良いが、0であっても音は鳴る(全く松脂を塗らない状態にはならない)ため、
松脂塗りムラあり(0.00) ~ 塗りムラなし(1.00)と解釈しても良いかもしれない。
量は奏者によってもバラつきがあり、一曲弾いただけで大幅に消耗するものではないので、楽器のデザイン向きパラメータだと考える。
音程のブレやすさに影響が出るが、特に短音や高圧力での変化が顕著である。
低値では弱音(弓が低速)で若干掠れ、スタッカートノートでは入りのピッチが少しずれてから到達するようになる一方、
高値では出音が比較的安定する。
演奏するジャンルによって適宜量を増減させるとさりげない表現に役立つものと思われる。
常に変動させる必要はないが、ヒューマナイズに役立つ。
トレモロ奏法の入力について記す。
Bow Gesture: ExpressionではTremolo [Slow / Fast](Tremolo)を使うと楽である。
下の画像はBow Gesture: Expressionにおける擬似トレモロ(弓の向きは一定)の入力。
厳密ではないものの、違和感が少ないので使えなくもない。
谷の値を0に設定しなければトレモロの緩やかな混じりも表現できる。
Bow Gesture: Bipolar, BowingではExp値を素早く上下させるだけで表現可能。弓の向きも交互に入れ替わり自然になる。
バッテリー奏法は一弓で演奏するため、ノートをスラーで交互に配置して表現する。
Bow Gestureに合わせた制御法について記す。
基本的な挙動については先に述べてある(参照: Expression)ため省略する。
まずは各Gesture Modeに適した制御法についてまとめる。
Expressionは操作も易しく取っつきやすいモードだが、
単体では運弓指定ができないためSustain(CC64)やBow Startを併用する必要がある。
トレモロも苦手で、Tremolo機能に頼る場面が多いと思われる。
弓の返し地点における減速の入力に手間が掛かるため、手を抜くと機械的な演奏になりやすいが、
安定した演奏・表現がしやすいといったメリットもある。
特に、低速でのゆったりとしたフレーズやリズム的なフレーズにおいては他のモードよりも制御が楽である。
単体でできることが限られるためKS,CCの入力量が増えがちではあるが、パラメータを考える入口としても最適で扱いやすいモードである。
BipolarはExp範囲の中央を0として両極で最大値をとるモードであり、一般的なコントローラ・設定では制御が難しい。
メリットは弓方向が固定されるという点である。Expressionモードではスタッカートノートやスラーが一定の長さを超すと弓が反転するが、
Bipolarでは弓方向は常にExp値によって決定される。
またBowingとは異なり、弓方向を変えずに切れ目なく音を出し続けることが可能であるため、
BipolarはExpressionとBowingをミックスしたような挙動が可能である。
唯一にして最大の弱点は、円を描くような動作で安定した入力ができるために弓の減衰と弓方向どちらともに気を配らねばならず、
現実的なボウイングのシミュレーションが難しくなる点である。
ExpressionとBowing、どちらともの長所だけでなく短所も含んだモードと言える。
ちなみに、Bipolarに特化したアプリケーションも存在する。
Pen2Bow(Mac)ではペンの認識時の方向によって弓方向が決定され、安定した出音・減衰には期待できるが、ボウイング制御の難度は高い。
モーションコントローラで制御する場合は、認識時のオフセットを中央(0)に設定するとボウイング制御の難度が幾分マシになるのではと思われる。
ペンタブレットとXYZコントローラ(ソフト)などを組み合わせると同様のことができる。
ペンタブレットによるMIDI制御ソフトは
Winでは
MidiStylus(CodePlex Archive)
MIDITab(PRODUCTS > Older Stuff)
Macでは
μ MIDI Controller(PRODUCTS)
などが挙げられる。
BowingはExpグラフの傾きがそのままボウイングに反映され、直感的な制御が可能になる一方で入力難度が跳ね上がるという
諸刃の剣のモードである。
ExpressionモードでSustain(CC64)やBowStartを駆使してボウイングや減衰まできちんと作り込み、
挙動と音色をある程度理解しておくと多少は親しみやすい。
入力にはホイールやモーションコントローラ(Leap Motion Gecoなど)が便利だが、
制御法を実際のボウイングに近づけられるという点でモーションコントローラの方がより適していると考える。
コントローラを用いず入力したり修正する場合は、実際の奏者のボウイングをイメージし、
どこで弓速度が変化するのか、グラフの変曲点がどこになるかを見極めることが重要である。
このモードをモーションコントローラで扱うにあたって、制御法を実際のボウイング動作にいかにシンクロさせられるかが重要である。
SeaBoardなど様々な動作認識が可能なキーボードを併用すると更に複雑な制御が可能となる。
手の動きを認識するLeap Motion Gecoを例に考えると、左右の動きはExpressionに割り当てるのが最適だと考えられる。
上げ弓・下げ弓の方向を間違えないようすることも大切である。
同じように考えると、手の前後の動きにはBow Positionが適している。
認識幅を実際の弓に近づけるためのスケール比や認識時のホームポジション(オフセット値)を設定し、
認識が解けてしまわないよう両端に少し遊びを持たせると制御しやすい。
弓方向による弓の動きやすい方向(コントラバスを例にすると、手前に引く下げ弓では弓が指板に寄りやすい)を考え、
コントローラ自体を斜めに傾けても良いかもしれない。
他にも様々なパラメータがあるが、Bow Pressureは手の上下、もしくは手首の捻り(ピッチ動作)に割り当てると良いと思われる。
そして、他のモードよりも重要な関わりを持つのが
Advanced: Expression Curve(Expr. Pedal Typ) [Lin 0 ~ Exp 1 (初期値Ln 0.4)]である。
弓の返しが速くアタックがすぐ立ち上がる表現ではキビキビとした挙動が求められるため、Lin 0に近い値が望ましい。
0に近ければ近いほど繊細なグラフ操作が求められるため、普段はLn 0.2前後に設定し、
デタシェやスタッカートなどでLin 0にするのが良いと思われる。
逆にゆったりとした曲やなめらかな弓の返しにする場合はEx 0.6前後に設定すると制御しやすい。
ただし、あまりExp 1に近すぎるとまともに音を出すこと自体が難しくなるため注意する。
Exp Curveをリアルタイム制御する場合はペダルなどに割り当てるとすぐ対応できる。
Interactive BowPress(Interactive Bow)は弓の圧力によるピッチ・ノイズへの影響を設定するパラメータである。
範囲は0.0 ~ 1.0、デフォルトでは0.7。
Bow Noiseと組み合わせると掠れ具合を調節でき、長音であるほど有効。
Interactive BP 0.0 | Interactive BP 1.0 | |
Flaut. | 安定 | 上擦る |
Scratch | 掠れる(ピッチ半音下 ~ 四分音下) | 安定(ピッチ半音下 ~ 指定音高) |
基本的にはデフォルト値で問題ないが、Bow Pressureと同じCCに割り当て、マッピングのみ変更するとノイズ傾向が設定できる。
圧力による影響を抑え、出音を比較的安定させたい場合はInteractive BPのマッピングをx=yまたは上に凸にすると良いと思われるが、
面白味のない演奏にならないよう工夫が必要となる。
Pizz.FBoard Interf.は指板との干渉を設定するパラメータであり、主にPizzicatoの音色作りに役立つ。
Bowing, Col Legnoには影響しない。
範囲は-1.0 ~ 1.0、デフォルトでは0.5。-1.0に近づくにつれくぐもった音になり、1.0に近づくにつれボワボワした音になる。
通常の使用ならば0以上の値をとるのが無難だと思われる。シンセ的な効果を狙うならば負の値をとると面白い。
String Res.と組み合わせると変化が分かりやすい。
SWAMに搭載されているPan(定位)は一般的なものとは挙動が異なるので注意する。
SWAM搭載のリバーブと合わせて用いるパラメータであるため、外部リバーブのみを使用する場合は設定の必要はない。
Pan Potを左右どちらかに振ってから確認すると効果が分かりやすい。
Dynamic1, Dynamic2, Acoustsic, Balanceの4種から選択可能で、SWAM搭載のリバーブに影響する。
Dyn1,Dyn2では奏者の体の揺れを再現でき、Acoustic,Balanceでは奏者は揺れない。
Balanceのみ、リバーブの発生位置にも影響を及ぼす。(一般的なPanと同じ挙動)
尚、Violin, Viola, Cello, Double Bass全てでAcoustがデフォルトである。
ソロパートや室内楽、奏者の差異化などにDyn1, Dyn2を用いると良いと思われる。
Master Tune Hz, Micro Tuning, Temperamentについて記す。
奏法に関するものはこちら。(参照: Pitch Bend)
弦のチューニングに関するものはこちら。(参照: Alt Fing)
Master Tune Hzは基準ピッチを設定するパラメータである。範囲は400.0(-165Cent) ~ 484.0(+165Cent)。
通常は440前後で楽器のピッチを揃えたり緊張感を出すのに用いるが、
音を生成するという物理モデリングの強みを活かし、Pitch Bendとの併用により更なる音域拡張(120Centが半音に相当)にも役立つ。
Micro Tuningの利点は、12音階それぞれで調律を行えることである。
純正律や平均律はもちろん、マカーム(ラースト・E,Bが1/4低い)などの設定により民族音楽の演奏にも役立つ。
調律するにあたってModarttのPianoteqが非常に参考になる。
Micro Tuningが真価を発揮するのは重音奏法である。
Pitch Bendだけでは同時に奏でている弦両方に影響が出るため機械的になりやすい。個別にピッチ変化をさせることでより生々しい演奏になる。
ちなみに、開放弦にもPitch Bendが上方向のみ適用される(下方向は無効)ため、開放弦を用いる重音奏法ではPitch Bendは使えない。
Micro Tuningは開放弦には適用されないため非常に使い勝手が良い。
Temperamentは音が引っ張られる(デチューン)方向を決定するパラメータである。
SWAM Violinを例にする。音域はG2 ~ F6、その中央はF♯4である。
Temperamentが負の値であれば全ての音がF♯4に引っ張られ、正の値であれば全ての音がF♯4から遠ざかる。
高音域であるほど、または低音域であるほどTemperamentの影響を強く受けるということである。
尚、F♯4は音域の中心であるためTemperamentの影響しない。
圧迫感・解放感の付加はもちろん、速いフレーズのヒューマナイズなどに特に有効なパラメータである。
Micro Tuning, Temperamentは音の開始時のみに適用され、発音中に値を変更しても影響を受けない。
GUI上にある表の12音それぞれで右クリックをするか、MicrotuningのCC割り当てによるSelect Note ModeでON / OFFが切り替えられるが、
基準値からの変化が小さいと確認しづらい。VSTパラメータ(Microtune Statu)で切り替えを行うと分かりやすい。